子どもの病気に関わる医療者の皆様の声をお届けします。
今回ご寄稿いただいたのは、神奈川県立こども医療センター血液・腫瘍科医師の柳町昌克先生。
リラのいえの活動に様々なご協力をいただいております。この度、地元地域から闘病中のご家族を応援するボランティア団体「ちあふぁみ!」を立ち上げられました。
私はよくケガをする子どもでした。必然的によく病院にお世話になる子どもでもありました。そして母が薬剤師であったことも影響してか、いつのころからか将来はけがのお医者さん(整形外科医)になることを考えていました。しかし、いつも初志貫徹できない私は医学部で学ぶ間に、お子さん達の未来につながる仕事がしたいと、小児科医の道に逸れてしまいました。小児医療に携わることはとても楽しく、やりがいもありますが、小児医療であるがゆえに辛いことも多いなと感じています。一歩、病院の外にでると、元気に遊んでいるお子さんや、そのお子さんを笑顔で見守る親御さんを当たり前に見かけます。でも、それは当たり前ではない、素晴らしいことなんだと感じずにはいられません。そんな一見当たり前に見える素晴らしい穏やかな日常やその子らしさを取り戻すために、病気や障がいと上手に暮らしていくために、一生懸命頑張っているお子さんや親御さん達を、小児科医としてだけでなく、「一応援団員」として応援できないかと考えるようになりました。
そのような中、志の高いナースマンや、ものすごい瞬発力の小児科の先生と一緒に「ちあふぁみ!」というボランティア団体を立ち上げました(「ちあふぁみ!」のご紹介は後半で)。ボランティア団体を立ち上げたと言っても、いざ何をしたら良いのかも分からず、いろいろな方に相談していたら、「まずはリラのいえを見学してきて、闘病中のご家族の病院の外での様子を知ることから始めたら?」とご助言いただき、リラのいえを訪問しました。
この訪問はあらゆることが衝撃的でした。リラのいえがあるからこそ、また、リラのいえを365日24時間ずっと笑顔で支えてくださるスマイルオブキッズやボランティアの皆様がいらっしゃるからこそ、そしてリラのいえをいろいろな形で応援してくださる有志の方や企業さんがいらっしゃるからこそ、私たちの小児医療は成り立っているのだなと気づかされました。徒歩8分圏内にこんな素晴らしい応援団がいらっしゃることを知りませんでした。面会を終えてクタクタに疲れ切った親御さんが自然に「ただいま~」とリラのいえに帰ってきて、これまた自然に「おかえり!」と笑顔で迎えてくださるスタッフの方々、そのまま立ち話での親御さんの心配事に暖かく聴き入られるスタッフ、お話されたあと少し表情が和らいで自室に戻っていかれる親御さん。このような非日常の中の暖かい日常を拝見して、次の日からの診療のモチベーションが上がらない訳がありません(笑)。リラのいえは患者さんや親御さんやごきょうだい(闘病中のお子さんもとても頑張っていますが、ごきょうだいも負けないくらい頑張ってくれています)の大きな支えであるだけでなく、リラのいえのような素晴らしい応援団の存在を実感できることは私たち医療従事者にとっても大きな支えだと思います。
「こどもは未来を担う宝物」であると先輩小児科医から教わり小児科医をしてきましたが、「こどもはそばにいてくれるだけで宝物」であり、そのような気持ちをお持ちの方々に支えられている小児医療なんだなと感じています。是非、この暖かくて力強い応援の輪が拡がっていくことを祈念しております。
お子さんの治療に携わっていると、患者さんだけでなく、患者さんのベッドに突っ伏して疲れ切って眠っている親御さんや、きょうだい保育や学童保育で頑張ってくれているごきょうだいのこともとても心配でした。ただ、正直、どのような応援の方法があるのかわかりませんでした。お子さんの日常を取り戻すためには、ご家族は肉体的、精神的、経済的に想像を超えるご負担と戦っていらっしゃいます。そのようなご家族を応援しながら、闘病中のお子さんの療育環境の改善も目指して、地元地域から闘病中のご家族を応援するボランティア団体「cheer families on ちあ ふぁみりーず おん」略して、「ちあふぁみ!」を立ち上げました。この「地元地域」というのは、神奈川県立こども医療センターの地元地域(六ッ川・弘明寺・東戸塚・上大岡)はもちろん、遠方から当院に通われている患者さんのまさに「地元地域(ホームタウン)」も含まれます。それぞれの患者さんの「地元地域」から応援の声が届くと、どれほどご家族が勇気付けられることでしょうか。皆様の応援の声を是非、闘病中のお子さんやご家族に届けてください。それこそ、まだまだヨチヨチ歩きの小さなボランティア団体ですが、皆様のお力で「ちあふぁみ!」を立派な応援団に育てていただければと思います。ご興味を持っていただけた方は、この活動でお知り合いになれた「キープ・ママ・スマイリング」のホームぺージと一緒に是非私たちの「ちあふぁみ!」のホームぺージも御覧ください。