スマイルオブキッズ正会員のTさんは、身体的な病気をもつ娘さんのお母さまであると同時に、リハビリ職に就く医療のプロフェッショナルでもあります。そのなかで、娘さんの病気に特化した患者会を立ち上げ、細やかな配慮で会員をサポートしながら、ご自身でチャリティーコンサートを企画するなど、多岐に渡った活動をされています。
ーーー Tさんとスマイルオブキッズとの出会いを教えてください。
娘の習い事(マリンバ)の先生からスマイルオブキッズが主催するチャリティーコンサートのチラシをいただきました。残念ながらそのコンサートには行けなかったのですが、スマイルオブキッズの活動内容を知ったことがきっかけとなり会員になりました。
ーーー なぜスマイルオブキッズを支援しようと思われたのですか?
娘がおなかにいるときから、神奈川県立こども医療センターに通っていたので、「リラのいえ」の存在は意識していたように思います。小学校教諭だった母が障がい児教育に関わっている様子をそばで見ていたことや、私も大学で福祉を学びながら、国内外でボランティア活動を行ったことが、支援に影響しているかもしれません。わが家はこども医療センターまで車で通える距離にありますが、遠くから治療に通われているご家族の負担が少しでも減ればいいなと考えました。
それに加えて、スマイルオブキッズの活動をとおして、きょうだい児支援の大切さを知ったこと。また、エンターテインメントに触れる機会が少ない障がいのある子どもたちのためのコンサートなどの活動も支援したいと思いました。
ーーー Tさんご自身もコンサートを企画されているそうですね。
はい、独自に2回ほどチャリティーコンサートを開催して、スマイルオブキッズと横浜こどもホスピスプロジェクトに寄付しました。マリンバの先生方が演奏者として協力してくださり、娘も一緒に演奏させていただきました。チラシやパンフレット作りなど大変な面もありましたが、たくさんの人がコンサートに足を運んでくださり、多くの募金が集まったことは、とてもありがたく嬉しかったです。また今後も企画したいと思っています。
ーーー Tさんは娘さんの病気の患者会も立ち上げられたと聞いています。
娘の病気は希少なため、今まで患者会がなかったので、数年前に立ち上げました。チラシを作って病院に掲示してもらったり、医師を呼んで講演会や集いを開催したりしています。また、症状や困り事などのアンケート調査を実施したり、医療や福祉制度の改善を求めたりといった活動をしています。最初6組だった仲間が、今では70組まで増えました。
ーーー 患者会の存在によって救われているかたがたくさんいらっしゃると思いますが、運営にあたって、気をつけたり、配慮されたりしていることはありますか?
会員である仲間の悩みや心配が少しでも軽減してほしいと願いながら、話を聞くようにしています。残念ながら、娘の病気は確立された治療方法がありませんので、特に情報共有をするときは気をつけています。重症度もさまざまで、それぞれ症状は似ていますが一概に「こうだ」と語ることができませんから、アドバイスが押し付けにならないように心がけています。
ーーー Tさんの主催される患者会とスマイルオブキッズの活動の共通点があったら教えていただけますか?
私は「リラのいえ」を利用したことはありませんが、子どもが入院中、病院から帰ったときに、話を聞いてもらえたり、ホッとしたりできる場所があるのは、入院中の子どもをもつご家族にとってとても心強いと思います。
私も同じ病気の子どもをもつお母さんや仲間に初めて出会えたとき、どれだけ心強かったことか……。そこが共通しているところだと感じています。
ーーー スマイルオブキッズの活動を皆さんに支援してもらうために何が必要だと思いますか?
スマイルオブキッズや「リラのいえ」を知らなければ、情報は入ってくることはありません。実際に支援されている方たちと触れ合う経験がないと、支援しようという気持ちにもっていくのは難しいと思います。
例えば、身近に病気や障がいのある子どもがいたり、支援のためのコンサートのチラシをもらったり、テレビ番組で見たりなど、何かしらのつながりが必要かもしれませんね。そのために、イベントを企画したり、情報を発信したりすることが重要になると思います。
ーーー 最近は、障がいに対する理解も浸透してきましたが、それでもまだ足りないように感じています。
この20年で、交通機関や障がい者の自立生活もずいぶん変わってきましたね。
でもまだ健常の子どもと障がいのある子どもが一緒に遊ぶような機会はなかなかありません。
「これからの社会に必要なこと」を考えると、保育園や療育、学校と教育の場からもう少し変わっていってほしいと願っています。
娘は10カ所の幼稚園を断られたので、保育園に行きました。でも保育園でさえなかなか入れない仲間もいます。教育の世界では、インクルーシブ教育、合理的配慮などといわれていますが、でも結局は、健常の子どもと障がいのある子どもを分けてしまっていますよね。また、合理的配慮と言っても、「お子さんが通うなら、親が付き添ってください」という学校が多く、まだまだ親の負担は減っていませんね。
例えば、アメリカの学校では、様々な職員やボランティアが入っています。障害のあるなしに関わらず、助けが必要な子どもたちに、必要な場面で援助をしているようです。
ーーー そのために私たちができることはありますか?
今、私は小学校で支援員として、障がいのある子どもが在籍する一般学級に入っています。このクラスの児童のように、子どもの頃から障がいのある友達と自然にふれあい、一緒に成長していけば、大人になっても心の障壁などを持つことなく接することができると思うんです。そういうことがとても大切だと感じています。大人になってから、壁を越えるのは難しいですからね。
ーーー スマイルオブキッズの今後に期待することを教えてください。
病気を持つ子どものいる家族の生活は、母親が倒れたら終わりといわれるような現状だと思います。まだまだ家族の負担は大きいので、少しでもそれが軽減されるように支えていっていただきたいです。
また、音楽だけでなく、病気や障がいのある子どもたちがふだん体験できないような、絵画やスポーツ、キャンプなどを提供していただきたいですね。本物のアートやエンターテイメントに触れることは、障害のありなしに関わらずとても大切だと思いますので。