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利用者の声きょうだい児保育

【利用者の声】Mさま

六ツ川のバス通りからこども医療センターに向かう坂道を、雨の日も夏の暑い日も、私はベビーカーを押してえっちらおっちら登っていきます。季節の花々に囲まれたリラのいえが視界に入ってくるのは坂道に入って割とすぐ。体力的にも精神的にもいつも救われています。

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我が家に初めての子ども――双子の兄弟が誕生して1年と少しの時が経ちました。たかが1年。されど我が家にとっては長い長い1年でした。

 

双子の弟は重度の先天性心疾患で、生まれた翌日にこども医療センターに救急搬送されました。その後何度かの治療や外科手術を乗り越えながらも、一度も退院することなく様々な合併症と闘いながら今日も入院生活を続けています。

 

私達夫婦がリラのいえの一時保育を利用しはじめたのは、弟の2度目の心臓カテーテル治療が決まった時でした。弟とは違い健康とはいえ、まだ生後たった2ヶ月の小さい兄を家族以外の方に預かっていただくのは心配もありましたが、実家も遠方で当時他に頼れる場所もなかったため、一も二もなく短時間の慣らし保育と治療当日の保育をお願いすることに決めました。

慣らし保育の時間を終えて迎えに行くと、兄は落ち着いた様子でニコニコ微笑んでいました。保育士さんから兄と保育レポートを受け取ったとき、ホッとすると同時に、親子ともども少しレベルアップしたような気がしたのを覚えています。

 

それから生後3ヶ月を過ぎて、週に何度か面会の為に兄を預かっていただく日々がはじまりました。

0歳児の成長は想像以上に目覚しく、首が座り腰が座り、どんどん体重も重くなり、様々なものに興味を持ち、ハイハイやたっちもできるようになって、世界が広がっていった兄。そんな我が子が楽しそうに遊び回る姿が、毎回いただくレポートの中にも蓄積されていきました。

 

「高いところからも時計をよく見ていました。よく見えるね。」

「○○くんと二人、お互い意識したりマイペースだったり。本当に面白いです。」

「ハイハイがずいぶん速くなりましたね!」

いつでもどの保育士さんも、丁寧で読み応えがあるレポートを書いてくださいます。まるで家族のように兄をかわいがり、成長を喜んで下さっていることが嬉しくて、私は週末になると溜まったレポートを何度も読み返しています。

 

また、他のきょうだい児との触れ合いを見守ったりしてくださることも、ありがたく思っています。

弟の容態がなかなか安定しないため、私達夫婦は兄を保育園に入れることもできず、また、なかなか遊びに連れて行ってやることもできません。きっと今後も、普通の子より我慢をさせる機会が多くなることでしょう。そんな中、リラのいえでは年上のお兄さんお姉さんに可愛がってもらったり、時には自分より小さい赤ちゃんと出会ったりして良い刺激を受けています。よく一緒になる2ヶ月先輩の子とはすっかり顔見知りで、最近はその子の動きを見て絶叫するほど大興奮しているとか。

こうした「病気と闘っているきょうだいがいる」、つまり同じ立場のこども達との交流は、今後兄が成長していくうえで、彼の心の支えとなるのではないかと思います。

 

最後に、改めてリラのいえの保育士のみなさんへ。

いつも本当にありがとうございます。

しばらく間が空いて久々に会ったときは、兄の成長に驚きつつ祖父母並みのテンションで喜んでくださったこと。

弟が1歳を目前にして弟が急変し、新たに重い脳障害を負ってしまったと主治医から宣告された日には、取り乱す私と一緒に泣いてくださったこと。

ハイリスクな手術を乗り越えなんとか1歳を迎えることができた日には、双子それぞれに心のこもったお祝いのメッセージカードをくださったこと。

また、寒い日には温かいお茶を出して労ってくださったりといった、何でもない日のお心遣いに至るまで。

すべて大切な思い出です。

 

弟の病気は一生付き合っていかなければならないものですから、まだまだ長らくお世話になります。これからも坂道の途中で皆さんの笑顔に会えることを楽しみに、日々病院に向かいたいと思います。

 

2020年8月

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