お知らせ

イベントきょうだい児保育

<レポート>第3回 病気や障害のある子どもの「きょうだい児支援」シンポジウムを開催いたしました

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・2021年10月2日(土) オンライン開催 

・配信拠点:患者・家族滞在施設「リラのいえ」

・参加者:141名

・かながわボランタリー活動推進基金21ボランタリー活動補助金対象事業

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2019年度より継続開催し、本年度で第3回目となりました。当法人の運営する患者・家族滞在施設「リラのいえ」から、登壇者の皆様、参加者の皆様を繋いで開催しました。司会は、エフエム戸塚パーソナリティ相浦やよい様にお願い致しました。

ご講演と質疑応答の内容を、抜粋してご報告致します。

第一部:基調講演 認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク 部長 本田睦子様


きょうだいが集う「キッズ団」

「認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク」が行う「交流活動」のひとつに、サマーキャンプ“がんばれ共和国”があります。医師や看護師が常駐し、病気の重さなどにより参加を断ることはなく家族で参加できます。きょうだいも一緒に楽しめます。

1994年のキャンプで宿舎が満室になってしまったため、急遽、きょうだいがお寺に泊まったことをきっかけに、きょうだいだけのプログラム「キッズ団」が生まれました。小さなころから参加していたお子さんが、大きくなってから小さい子をフォローするという場面が見られたり、親や友達には言えないきょうだいの悩みを、お互いに分かち合うことができています。

アンケートでも、きょうだいにとっても、親から見ても、きょうだい同士が出会って「みんながんばっている。大変なのは自分だけじゃない」と思える場として大切にされていることがうかがえます。

小児慢性特定疾病児童等(小慢)自立支援事業の実施状況について

難病ネットワークでは、東京都から必須事業の相談支援事業(ピアサポーター等)の委託を受けています。任意事業では遊びのボランティア派遣などを行っています。

2015年の法改正時に、任意事業に「きょうだいの預かり支援」が入りました。これはとても良いことで、小慢法改正時に、難病ネットワークの親の会の皆さんが、厚生労働省担当課長にきょうだい支援が必要ということをあきらめないで伝えた成果でもあります。

しかし現状では任意事業自体、実施している自治体が半分以下です。

各自治体が必要に応じて実施できるように、自由度が高い制度になっているのですが、どのように実施して良いか分からない、予算確保できない、ニーズを把握してないという課題があります。

厚労省の小慢検討委員会では、任意事業の実施を努力義務にするのはどうか?というような事が話し合われており、状況を良くするために考えてくれています。

親からきょうだいへの想い

病気の子どもを育てた経験のあるピアサポーターさんから「親からきょうだいへの想い」を聞きました。

「もっとあなたのそばにもいてあげたかった。さみしい思いをさせてごめんなさい。」「いつも病気の妹(兄弟)を気にかけてくれてありがとう」「病児の将来に責任を持たなくても良い」「自分のために楽しい人生を送ってほしい」

難病ネットワークが支援する家族の中には、大切な家族の一員であるきょうだいも含まれています。きょうだいだけの支援でないからこそ、メッセージを届けるなど、親ときょうだいの橋渡しをする活動もできるのではと考えています。

第二部:パネルディスカッション

3名の登壇者から活動報告をいただきました。

 

神奈川県立こども医療センター 緩和ケアサポートチーム看護師 古賀文佳様

緩和ケアはあきらめの医療というイメージがありますが、最近では、 QOL(生活の質)を向上することを目的としています。小児緩和ケアの特徴として、家族のサポートも必要とされます。病気の種類が多く、発展途上にあるため状況も変わり、家族の負担が大きくなるためです。こども医療センターでは家族(きょうだいも含めて)第二の患者と位置付けています。

親や周囲は病気のこどもに注目しやすいため、きょうだいは言葉にできない思いを抱え込み、無理に感情を押し込めいい子になろうとする傾向があります。

きょうだいも成長発達をしているため将来を見据えたケアが必要で、特に、兄弟姉妹が亡くなり行く現実に直面した場合には積極的に関わりを持って、こころの準備ができるようにしています。

 

神奈川県立こども医療センター きょうだいお預かり保育士 小林二美江様

医療センターのボランティア団体、オレンジクラブで2006年に開始した「きょうだいお預かり」グループで、ボランティアを支える保育士として活動しています。2020年2月以降は、コロナできょうだいは院内に入れず、現在は中止しています。休止中に、きょうだいさんがお父さんお母さんと遊べるように「あそびキット」を届けることを始めました。手作りキットは平均60~80セットほどボランティアさんと一緒に製作しています。

2018年からは、医療センターできょうだいお預かりをしている3団体(県立保健福祉大学の学生ボランティア「チャイルドウィッシュ」、リラのいえきょうだい児保育、オレンジクラブ)できょうだい児支援連絡会を立ち上げ、きょうだいさんやご家族のためにより良い支援を考えています。

 

一般社団法人みんなのレモネードの会 代表理事 榮島佳子様

小児がん患児家族の立場から「小児がんのことをもっと知ってほしい」、「患児や患児家族でつながりたい」と小児がん啓発活動、患児やその家族の交流会などを開催しています。コロナ禍では、「みんレモオンライン交流会」を開始、全国からの参加があるようになりました。交流活動には、必ずきょうだいも一緒に参加できるようにしています。

「ぼくはレモネードやさん」は小児がん経験者の兄しろう君が描いた絵本です。「どうしてお兄ちゃんばっかりなの?」 という弟かずほ君の言葉をきっかけに、母自作で絵本「ぼくはチョココロネやさん」を作り、10/15出版になります。きょうだいさんの日常を淡々と描いたものですが、様々な立場の人に読んでいただければと思います。

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本田様にも参加いただいたクロストークでは、きょうだい児支援「たて・よこ・ななめ」の関係をテーマとして、それぞれの団体がどのような繋がりを大切にしているかが話し合われました。

間接的な関わりとしてななめから見守る事が多いけれど、時には横にいてきょうだいさんの力になることもできると伝えたい。きょうだいさん同士の出会いの場を作ることによって、横の関係の中で様々な思いを打ち明けあうことができるようにしたい、など、きょうだいさんを中心とした家族支援の形を考えました。

第二部:質疑応答

チャットに寄せられた質問にお答えしました。当日は取り上げることのできなかった質問も含め、Q&Aをご報告します。

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Q:親からきょうだいへのメッセージについて。「責任持たなくていいんだよ」と、きょうだいに言い続けて欲しいが、親自身の心構えへのアドバイスをお願いします。

A:親も自分の気持ちを出してほしい。ピアサポーター、保育士、看護師など。親からお話を聞くことで、気持ちを引き出すお手伝いをしたい。

A:親の立場で「責任を持たなくていいよ」思ってはいるが、気持ちは行ったり来たり。親たちに向けて、「どうしてる?」と話せる場を提供することを続けていきたい。


Q:きょうだい支援にとって父親の役割は何ですか。

A:母が主に病気の子どもに関わるので、父は母の心のケアや、きょうだいを外に連れ出すなど。母ひとりの時間を確保することも大事だと思う。

A:父が抱えこんでしまうのもよくない。父もガス抜きができる場所もあると良い。

A:いろんなご家庭があるので、一概には言えないとは思う。入院中にきょうだいさんの身近にいる人として、ノウハウがあると良い。


Q:本田さんのおはなしの中で、「親御さんときょうだいさんの橋渡しができるといいなあ」とおっしゃられていて、本当に大事なことだなあ、と心新たにしました。皆様で、橋渡しとしてこんなこと心がけておられたり、考えられていることなど、お教えていただけますとありがたいです。

A:きょうだい児に関する相談の内容や、キャンプでのボランティアとの関わりの中から、間接的にきょうだいさんが思っていることを親に伝えるようにしている。

A:きょうだいの一日遊んだこと、かわいいところ素敵なところ面白いところなどを親御さんに伝えると、親御さんの顔が明るく元気になる。きょうだいがいる前で話すと、家族みんな、きょうだいもピカピカ笑顔になる。

A:不安に思っていることを話せるような場の提供をすること。


Q:小児慢性疾病児童自立支援事業からサマーキャンプへの支援はあるのでしょうか?

A:自立支援事業の一環ではないが、相談を受けた時には、ご案内をすることはあると思う。


Q:小慢関連の事業費が毎年10パーセント削減されたそうですが、制度内容にかかわらず総額削減なのでしょうか?任意事業の予算はこのままだとゼロ査定の可能性がありますか?

A:削減されていたのは、法改正をする2014年まで。2015年にそれでは困るので、義務的予算にしてほしいと訴えた。国で半分持つように。安定した事業に変わったと思う。


Q:榮島さんの活動でもオンラインに切り替えたからこそのいい点などのお話を聞く事ができましたが、榮島さんだけでなくオンライン活動を通す中でコロナ禍が終わっても続けていきたいと感じた活動は何かありますか?

A:コロナ禍で何より良かったことは、オンライン化が進んだこと。難病の子どもたちは普段から外に出られないし、近くに仲間がいない。どこでも参加できるように、もっと発展させていきたい。

A:オンラインだからこそ全国で繋がれた。親の会は関東と関西に分かれていたが、一緒にできるようになり、本来なら出会えなかった家族が出会えるようになった。ハイブリッドで、オンラインもやりつつ、直接会うことができれば。


Q:「縦、横、ななめの繋がり」をいい意味で変革していくのが全国ネットワークの活動かと思いました。構成メンバーの概要を教えてください。

(質問を取り上げることができなかったので、後日本田様より回答をいただきました)

A:当団体を運営する役員などには、難病や慢性疾病、障害のある子どものいる親と、小児科医を中心に、看護や教育、元行政の方など、さまざまな職種の方に関わって頂いております。
また、当団体の会員は、そのほかにも一般企業の方など、さらにさまざまな人が会員となって頂いておりますし、キャンプなどのイベントについては、会員以外の方にもご参加頂いております。

チャットには質問以外にも、感想をいただきましたのでいくつかご紹介致します。

・幼少期は、きょうだい児としての苦悩を自覚さえしておらず、ひたすら孤独感が大きかったです。

大人になってからも、きょうだい児として苦悩を感じておりましたが、こうして、シンポジウムに参加する事で、子どもの頃の自分も少し癒されている気がします。素晴らしい活動に感謝です。そして、私自身もその輪を広げていくことに関われたらと思います。(きょうだいさんから)

 

・小慢自立支援事業の任意事業に「きょうだいの預かり支援」が入ったものの、まだまだ任意事業自体実施が半分以下ということは、とても勿体ないことだと思いました。実施できない理由に対し、一つ一つ動いて下さり、心より感謝致します。(親御さんから)

 

・小学校の特別支援学級で教員をしています。同じ校内にいるきょうだいたちは、「しっかり者」がとっても多いんです。「しっかり者」でいなくちゃ、という思いも、きっと強いんだと思います。目を向けられづらい頑張り屋さんたちにも、学校全体で心を配っていきたいと思います。(学校の先生から)

 

・きょうだいについて授業の中でお話を受けましたがイメージがしにくかったのを覚えています。どんな関わりが必要なのかなどが難しく想像できませんでした。しかし今回具体的に、現状やいろいろな関わり方を知ることができてよかったです。(看護学生さんから)

 

・いろいろな職業やお立場の方が様々な角度からきょうだいの支援をされていることを再認識し、皆様の存在を改めて強く感じました。様々な立場からできる支援を広げることできょうだいさんをより温かく見守っていけるのかなと感じました。(看護師さんから)

最後に、登壇者の皆様にまとめと感想をいただきました。

・古賀様

こども医療センターで出会うすべてのお子さん、きょうだいさん、ご家族は大切な存在。皆さんが持っているこころや体の辛さを少しでも和らげるお手伝いができるように、きょうだいさんの未来が明るくなるように、一つ一つの出来事をケア、お手伝いできたらいいなと思う。こども医療のスタッフ全員が思っていることだと思うので、困ったことを誰かに話したいと思っているきょうだいさんがいたら、目の前にいる、誰かに声をかけてください。

 

・小林様

このシンポジウムで終わらせてはいけない、ほかにも活動されている皆さんの活動を知って、理解することが必要だと思った。

スマイルオブキッズの絵本「私たちの約束」に共感している。「病気や障害のあるお子さんとその家族の困難を、一気に解決するような魔法はどこにもありません。けれど、私たちに出来ることはあります。病院への一歩を再び踏み出す背中に手を添えること。家族が背負ったたくさんの荷物をひとつ持つこと。解かなければならない難しい宿題を一緒に考えること。」

こういった形でもきょうだいさん、家族の方とかかわっていきたい。

(スタッフより:ありがとうございます。よろしければHPからご覧ください。https://www.smileofkids.jp/)

 

・榮島様

シンポジウムを一番喜んでくれたのはきょうだい児である次男だった。普段講演の依頼をいただくのは、小児がんの患児の話や晩期合併症などの話がほとんど。今回は講演の練習を聞きながら、自分が中心の話だと、どこまで理解しているかわからないが得意げな顔だった。このシンポジウム自体きょうだい児にとって大きなななめの支援になったのでは。ななめからのいろんな場があることを伝えていきたい。 

 

・本田様

参加された皆さんとは、きょうだい支援の大切さを共有できていると思うけれど、社会的にはまだまだだと思う。小慢自立支援事業の中にも、きょうだい支援という言葉が入った。こういった制度も使いながら、きょうだいさんがひとりじゃない、応援している人がいっぱいいるということが伝わればいいなと思う。

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司会の相浦様からも、きょうだいをななめから見守る大人でありたいと感想をいただきました。相浦様のラジオ番組の中で、「ラジオからこんにちは」というコーナーがあります。神奈川県立こども医療センターに入院するお子さんと繋がりたくて作られたというコーナーで、お子さんからの直筆のリクエストに応えて曲をかけています。お手紙の中から、きょうだいさんの存在を感じることも。

そのお人柄で、シンポジウムを優しく温かく進行してくださいました。リラのいえ保育室と滞在施設紹介の中継で音声が途切れてしまったのですが、参加者の皆様に分かりやすく状況を伝えていただくという場面もありました。改めましてお礼申し上げます。

 

各登壇者から、今回繋がれた皆さんと仲間としてかかわっていきたいとおっしゃっていただいたように、様々な活動を知って繋がりあう機会としてシンポジウムを継続していきたいと思います。


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記念撮影は「ななめ」ポーズでパシャリ。ご参加の皆様ありがとうございました。

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