・2021年1月9日(土) かながわ県民センターにて開催
・会場17名/オンライン111名参加
・かながわボランタリー活動推進基金21ボランタリー活動補助金対象事業
緊急事態宣言下で、会場/オンライン併用での開催となりましたが、北海道から沖縄まで、全国それぞれの場所できょうだい児支援に心寄せていただくことができました。会場/オンラインともに、音声や画像が途切れる場面があり、大変申し訳なく思っております。このような状況下では、今後もイベントのオンライン開催が予想されますので、改善に努力していきたいと思います。
ご講演に先立ち、当法人の運営する患者・家族滞在施設「リラのいえ」でのきょうだい児保育事業について、保育施設長松島より子よりご紹介いたしました。
保育の様子や利用傾向、こども医療センターのきょうだい預かりグループとの連携といった当事業の特徴の他、課題として、安定した運営のために行政との連携を目指していきたいということをお話しさせていただきました。
3名の先生方には熱意伝わるご講演をいただき、素晴らしいシンポジウムとなりました。要約になりますが
ご報告させていただきます。
看護師として小児看護にかかわる中で、きょうだい児支援の必要性に気付いたきっかけや、どのようにして支援の輪を広げていったのか、などをお話いただきました。
20年前には、多忙な医療現場では問題提起をしても「きょうだい児のケアまで手が回らない」と受け流されることが多かったそうです。それぞれの家庭の事情やきょうだい関係などにより、必要な支援は多岐に渡るため、具体的に何を行えばよいのかの選択肢を増やすことを目標に、保護者や医療者などにインタビューやアンケート調査をしたそうです。
きょうだい児本人への調査結果の中で、「きょうだい自身が我慢をしていること」が心に刺さりました。
「自分も一緒に面会したい。自分のことも母に聞いてほしい。でも心配かけたくないので良い子にしていなければいけない…。」
ずっと押し込めていた気持ちが大学生になってから溢れ出して、その後何十年もカウンセリングを受けているという方のお話や、看護師長として勤務していた病院で、毎日一人で待合室にいる3歳のきょうだいさんが、保育サポーターさんが寄り添うことで穏やかになって行った様子が語られ、幼少期からの心のケアの必要性が伝わりました。
「あなたのことも大好きです」という講演タイトルには、あなた=きょうだいさんのことも大切、忘れてないよ、というメッセージがこめられていているそうです。
Q:親からきょうだいへのメッセージについて。「責任持たなくていいんだよ」と、きょうだいに言い続けて欲しいが、親自身の心構えへのアドバイスをお願いします。
A:親も自分の気持ちを出してほしい。ピアサポーター、保育士、看護師など。親からお話を聞くことで、気持ちを引き出すお手伝いをしたい。
A:親の立場で「責任を持たなくていいよ」思ってはいるが、気持ちは行ったり来たり。親たちに向けて、「どうしてる?」と話せる場を提供することを続けていきたい。
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Q:きょうだい支援にとって父親の役割は何ですか。
A:母が主に病気の子どもに関わるので、父は母の心のケアや、きょうだいを外に連れ出すなど。母ひとりの時間を確保することも大事だと思う。
A:父が抱えこんでしまうのもよくない。父もガス抜きができる場所もあると良い。
A:いろんなご家庭があるので、一概には言えないとは思う。入院中にきょうだいさんの身近にいる人として、ノウハウがあると良い。
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Q:本田さんのおはなしの中で、「親御さんときょうだいさんの橋渡しができるといいなあ」とおっしゃられていて、本当に大事なことだなあ、と心新たにしました。皆様で、橋渡しとしてこんなこと心がけておられたり、考えられていることなど、お教えていただけますとありがたいです。
A:きょうだい児に関する相談の内容や、キャンプでのボランティアとの関わりの中から、間接的にきょうだいさんが思っていることを親に伝えるようにしている。
A:きょうだいの一日遊んだこと、かわいいところ素敵なところ面白いところなどを親御さんに伝えると、親御さんの顔が明るく元気になる。きょうだいがいる前で話すと、家族みんな、きょうだいもピカピカ笑顔になる。
A:不安に思っていることを話せるような場の提供をすること。
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Q:小児慢性疾病児童自立支援事業からサマーキャンプへの支援はあるのでしょうか?
A:自立支援事業の一環ではないが、相談を受けた時には、ご案内をすることはあると思う。
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Q:小慢関連の事業費が毎年10パーセント削減されたそうですが、制度内容にかかわらず総額削減なのでしょうか?任意事業の予算はこのままだとゼロ査定の可能性がありますか?
A削減されていたのは、法改正をする2014年まで。2015年にそれでは困るので、義務的予算にしてほしいと訴えた。国で半分持つように。安定した事業に変わったと思う。
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Q:榮島さんの活動でもオンラインに切り替えたからこそのいい点などのお話を聞く事ができましたが、榮島さんだけでなくオンライン活動を通す中でコロナ禍が終わっても続けていきたいと感じた活動は何かありますか?
A:コロナ禍で何より良かったことは、オンライン化が進んだこと。難病の子どもたちは普段から外に出られないし、近くに仲間がいない。どこでも参加できるように、もっと発展させていきたい。
A:オンラインだからこそ全国で繋がれた。親の会は関東と関西に分かれていたが、一緒にできるようになり、本来なら出会えなかった家族が出会えるようになった。ハイブリッドで、オンラインもやりつつ、直接会うことができれば。
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Q:「縦、横、ななめの繋がり」をいい意味で変革していくのが全国ネットワークの活動かと思いました。構成メンバーの概要を教えてください。
(質問を取り上げることができなかったので、後日本田様より回答をいただきました)
A:当団体を運営する役員などには、難病や慢性疾病、障害のある子どものいる親と、小児科医を中心に、看護や教育、元行政の方など、さまざまな職種の方に関わって頂いております。
また、当団体の会員は、そのほかにも一般企業の方など、さらにさまざまな人が会員となって頂いておりますし、キャンプなどのイベントについては、会員以外の方にもご参加頂いております。
コロナの影響で名古屋からお越しいただくことが叶わず、オンラインでのご登壇となりました。
「NPO法人しぶたね」の理事で、きょうだいのためのヒーロー、シブレンジャーのシブブラックとしてもご活躍です。(シブブラックのメッセージは「真っ黒な気持ちも大切にしていいんだ!」)
また、「小児慢性特定疾病自立支援事業の発展に資する研究」で任意事業と位置づけられている、きょうだい支援の情報収集や分析を担当されています。
最初に、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業(以下、自立支援事業)の概要や、支援団体・医療機関への調査についてお話いただきました。自立支援事業にきょうだい支援が盛り込まれていること自体がとても画期的なことで、留意事項として「非営利活動法人やボランティア団体との連携」が明記されていることが重要なのだそうです。医療機関への調査では「保護者にNPO法人のきょうだい支援活動を紹介している」という回答が少数だがあり、自立支援事業を広げるためにもこのような繋がりが生まれることが鍵になるのでは、とのことでした。
支援団体の取り組みを調査し、まとめた「きょうだい児支援取組事例集」が来年度以降、下記の情報ポータルサイトで閲覧可能になるそうです。
https://www.m.ehime-u.ac.jp/shouman/
その後、名古屋大学病院でのきょうだい会の様子をご紹介いただきました。
病院でのきょうだい会がほとんどなかった10年前から活動しているそうで、年々参加するきょうだいやスタッフが増えて内容が充実していることがよくわかりました。コロナ禍で開かれたオンラインでのきょうだい会は遠方からの参加を可能にし、大阪で活躍するシブレッドが登場するなど、オンラインならではの楽しい会になっているそうです。新しい取り組みとして、きょうだいの遺族会の立ち上げを企画しているが、オンラインでのスタートは難しいため保留にしているそうです。
横浜と愛知で、自閉症のきょうだい会を開催されています。
活動を始められた2003年には、親の会はあったけれどきょうだい会はほとんどなかったそうです。自閉症児の療育活動の一つである「きょうだい教室」を見学したときに、じっとしていられなかった障害児をきょうだい児が連れて帰るという場面に遭遇し、きょうだいだけの会が必要と考え立ち上げられました。病児のきょうだいは、一緒にいられなくて寂しい気持ちがある一方で、障害児のきょうだいは常に一緒に生活しているので離れる時間が欲しい、という気持ちがあるそうです。
きょうだい会だけではなくて、保護者会やきょうだいの想いを聴く会なども開催されています。今後は各地でのきょうだい会の立ち上げ支援や、きょうだい相談などにも活動を広げたく、その一環として、きょうだい相談のLINE公式アカウントを開設されたそうです。(@ntf8600s)
また、一斉休校中のきょうだい関係についての調査を行っており、ご協力を求められました。
*調査は下記URLから参加可能
https://forms.gle/WZ2fDxnqBrwkS4tY7
コロナ禍がきょうだいに与えた影響として、大人のきょうだい会がZoomで行われるようになったことがあげられました。オンラインの良いところもありますが、家庭状況により家族に話が聞こえてしまうなど、特に子どものきょうだいはオンラインで話しにくいことがあるようです。またTwitterできょうだい同士の繋がりを求める高校生が多くなっているそうで、親や障害児へのネガティブな発信も多いけれど、親への感謝やきょうだいの成長を喜ぶつぶやきもあり、きょうだいのアンビバレントな気持ちが表れているとのことでした。
一方でもともとあった問題も顕在化しているそうで、休校中のオンライン授業では障害児が妨げになってしまったとか、こだわりが強くなり付き合うのが大変だった、嫌なことがあっても外出できずに煮詰まってしまった、といったことがあったそうです。
参加者の皆様からのご質問をGoogleフォームでお送りいただきました。
たくさんの質問をいただき、登壇者から的確な温かい回答がありました。いくつかのQ&Aをご報告します。
Q:ご家族ときょうだいについて話題にしても、「どう支援につなげるか」に課題がありそうですね。
A:きょうだいの話題に触れたとき、ダイレクトなケアはできなくてもケアにつながる提案をすることはできる。
・介護を理由として保育園が利用できるという情報を提供する。
・医療者との会話できょうだいさんのことが話題にあがったことを本人に伝えていただく。
・きょうだいさんに病状をどうやって伝えるかを一緒に考える。
・たくさんの習い事を継続できなくなっても、ひとつだけでもなんとか続ける方法を考える。
病棟のスタッフは何もできていないと感じている方も多いが、できていることはあるのでは。(新家)
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Q:きょうだいの遺族会は国外にあるのでしょうか? また親の遺族会と異なる点はどんなところでしょうか?
A:はっきりと把握できていないが、国の内外問わずきょうだいの会で、亡くされたきょうだいさんもお誘いしているところも少なくないのではないか。死別後にきょうだいさんへの個別訪問をしている団体もある。
親の遺族会と異なる点は、きょうだいの死別にはダブルロスがあること。(大切なきょうだいを失い、戻ってきてくれると思った親も自らのビリーブメントケアを始める) そういう親の様子を見て、自分も悲しみに目を向けて良いのか、まだ頑張らなきゃいけないか、と考えてしまう。
親の遺族会にきょうだいも一緒に参加したことがあったが、それきり会には来ていない。親が亡くした子どもの話をすることは、きょうだいにとっては辛いだけでなく、親の期待を背負う場面になってしまうことに気づき、苦い思い出となっている。きょうだいさんが心の中にそっとしまっている想いを、安全な場で共有できる機会ができるよう今後期待したい。(新家)
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Q:ひとつの家庭にきょうだいが複数人いる場合、年上のきょうだいが精神的に背伸びをしてしまうことがある
気がするが、そうした時にどうすればよいでしょうか。
A:年上だと「あの子は大丈夫」と安心している母親が多いが、年下だと心配で母親の気持ちが落ち着いていない傾向がある。アプローチの仕方を変えることが必要で、意識してきょうだいと一緒に過ごす日を作ってもらったり、姉や兄に朝夕連絡を入れるようアドバイスしたりすることもあった。きょうだいが複数いると気持ちを分かち合うこともできるが、一人になってしまうきょうだいの方が支援の必要なことが多い。(藤村)
A:この子は大丈夫だという期待に応え良い子でいて、高校生になった頃に爆発するというケースが多い。女の子は特に背伸びしがち。年齢相応に甘えていいというメッセージを伝えたい。(諏方)
A:アメリカの文献に、大人のきょうだいさんが11歳のころを振り返り、「11歳らしくいたかった」「子どもとしての時間を過ごせなかった」と書いていた。三人きょうだいの一番上の姉が、「家事や下の子のお世話などしなくちゃいけない、その気持ちを吐露する場がない」と教えてくれた。きょうだい会でやり場のない憤りを吐露する発言を黙って聞いていた子が、終わったあとに「同じ気持ちを持っている子がいること知れてよかった」と伝えてくれた。そばにいてあげられる支援者がいることも解決策のひとつ。(新家)
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Q:はじめから大きな取り組みはできないと思うので、身近な取り組みからが大切だと思いますが、きょうだい支援をはじめていくためのポイントなどを教えていただけますか。
A:きょうだい会を作るのは難しい。きょうだい会だけがきょうだい支援ではない。病院だったら声掛けをするなど、それぞれが所属している場所で、できることを初めるのが良いと思う。(諏方)
A:今回のシンポジウムのテーマにもなっている「繋がり」が大切。自分自身も、きょうだい支援が必要とわかっていても当時はここまでできるとは思ってなかった。声に出したら、意外にも同じことを思っている人が周りにいて、しぶたねの活動や、諏方さんの愛知での活動を見学させてもらった。少しの勇気を出して(温かい方ばかりなので実際には勇気はいらない) 連絡を取ってみてほしい。実際に見てみると、こんなことできるんじゃないかとイメージできると思う。(新家)
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Q:保育園で保育士ができることはあるでしょうか?
A:きょうだいが病気であることを情報として持っていてもすぐ何かをするのは難しいし、家庭によって共通してできる支援も決まっていない。園児のケアをしながら、親が家庭の状況を話してくれる範囲でアプローチしていく。常に家庭環境を頭に置いておくのと、そうでないのでは違う。(藤村)
A:学校の教員としてできることは?という質問もよくある。きょうだいが同じ保育園・学校に通っているのであれば、きょうだいに障害児のお世話をさせないでくださいと伝えている。きょうだいはひとりの子どもとして学校、園生活を送らせてあげたい。(諏方)
パネルディスカッションのあと、短時間で参加者同士のグループディスカッションを行いました。
進行役をお願いした方々のお力により、貴重な交流の時間を過ごしていただけました。一方で、自己紹介だけで終わってしまい残念だったという声もあり、特にZoomのブレイクアウトルームでは物足りなさを感じたという声も多く、今後の課題とさせていただきます。
最後に、藤村様よりまとめのお言葉をいただき終了となりました。
藤村様と諏方様から、ご自身が制作されたDVDや冊子を会場の皆さま数名にプレゼントしていただきました。
藤村様は、ご自身もきょうだい児支援をライフワークとしていくが、若い先生方やご参加の皆さんの活動に期待したいとおっしゃっていました。
きょうだいさんの声やそれぞれの現場での活動の様子を、登壇者の皆様のお話から知る事ができました。
リラのいえで出会う小さなきょうだいさん達がこれからもたくさんの優しさに触れられると良いなと思いました。
また冒頭でお話させていただいた当法人の保育事業の安定化に向けて、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業は心強い制度なのではと考えています。医療機関との連携についても、もっと働きかけていきたいと思います。
テーマとなっていたきょうだい児支援の広がりと繋がりについて、具体例やアドバイスをたくさん伝えていただきました。それぞれの立場でできることに、思い巡らせていただく機会となりましたら幸いです。